参章 雪童子と友人

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 「君、この村の子だね」  六花の問いに、少年が怪訝な顔をした。  「だったらなんだ!」  「こんな夜遅くにひとりで出歩くなんて感心しないよ。早く家におかえり」  「ふん、俺はここをよく知っているから、おつかいで遅くなっても平気なんだ! お前たちの方が提灯も持たないで……逢魔ヶ刻を過ぎると妖の時間だから、危ないんだぞ!」  少年の言葉に、六花と蛍雪は顔を合わせた。くすりと笑ったふたりが気に食わないのか、少年は顔を赤くして「何だよっ」と噛みつく。  笑いながら「おれたちは」と言いかけた蛍雪の口を、六花が後ろから塞いだ。目を瞬かせて六花を見上げる。六花は唇に人差し指を当てて片目を瞑った。  「ここへ越してきたばかりだから、物が揃っていないんだ」  「灯りがないと、雪で溝が埋まっていても気が付かないぞ!」  「夜道には慣れているから平気だよ」  少年はむっと唇を突き出すと、つかつかとふたりの前に歩み寄ってきた。
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