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少年は太吉と名乗った。年は九つ、蛍雪よりもふたつ年上だった。ここらの村の子どもたちからは“大将”と呼ばれているらしい。
太吉は蛍雪を村の子どもたちに引き合わせた。すんなりと子どもたちの輪の中に入った蛍雪は、初めて同じ年頃の子どもたちと遊んだ。
逢魔ヶ時が始まるころには、眠気も警戒もすっかりなくなり子どもたちと必死に駆け回って笑い転げた。
太陽が山に隠れ、子どもたちはひとりひとりと家に帰っていった。蛍雪は最後まで残っていた。最後は太吉とふたりになって、ようやく帰路につく。
「なあ、お前の兄ちゃん怒らないかな」
「兄やが?」
「だって断りもなしに連れてきたんだ」
「どうだろ」
「怒られたら、あした俺が謝ってやる」
「ほんとう?」
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