1310人が本棚に入れています
本棚に追加
「……すみません、健一さん。ごめんね、麻ちゃん」
絞りだすような声でそう言った。
「話せないんだ」
神職は隠し事が多い。
昨日それを三門さんと話したばかりだった。
「んなこと言ってる状況かよっ」
健一さんが声を張り上げ三門さんの胸倉をつかんだ。
あまりにも唐突で反応できずに目を見開いて固まる。すぐにはっと我に返って間に入ったが、三門さんは抵抗するきがないらしくされるがままだった。
その表情は怒りでも悲しみでもなく、ただいつものようにどこか申し訳なさそうに微笑んでいる。
どうして。
「こっちが心配してんの分かってんだろ! 心配させないために隠して心配させてんならどのみち同じじゃねえかよ! ああくそっ」
勢いよく手を離した健一さん。慌てて三門さんの背を支えたが、やんわりと手をほどかれた。服を整えた三門さんはもう一度低い声で謝った。
私たちが欲しいのはそんな言葉ではないのに。
「俺にだけでもダメなのかよ」
「……すみません、駄目なんです」
舌打ちした健一さんは勢いよく立ち上がり、蹴破る勢いで部屋を出て行った。重い沈黙が流れる。
最初のコメントを投稿しよう!