伍章 三匹の神使 中編

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 この町で何が起きているんだろう。昨日の夜、一体何があったんだろう。  河川敷の傍を歩き傾く夕陽を眺めながら考えた。  みくりからなら事情を聞けるんじゃないかと思って社頭を探したが姿はなく、自宅に戻るのも気まずくて、長い時間をとぼとぼとと歩いていた。  三門さんとみくりが妖に襲われたのは本当だろう。健一さんが三門さんの怪我の具合を見ていた時にそう断言していたので間違いない。そして、それがただ単に妖に襲われた傷だけではないというのも、三門さんが「話せない」と言ったことでその通りなのだと言ったも同然だ。  妖に襲われて、それを話せない理由。それは一体何のだろうか。  何もできない自分がすごくもどかしい。  一つ溜息を吐く。その溜息のもうひとつの原因は、自分がうっかりと漏らしてしまった最後の言葉だった。  健一さんから聞いた十年前の話を、三門さんの前で口にしてしまった。
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