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その時の、頬を引っぱたかれたような三門さんの顔が頭から離れない。
三門さんの思い出したく無い記憶を無理やり引きだしてしまった。きっと三門さんはあの時を恥じて悔やんで、忘れたくとも忘れられずにずっと苦しんでいるのだろう。だからあんなにも泣きそうな顔をしたんだ。
そんな顔をさせたかったわけじゃなかった。
本当に三門さんを助けたかったんだ。自分で自分のことは守れる、だから手伝わせてほしい。そう言いたかったのだ。
「……何にもできないんだなあ、私」
自分の無力さを口に出して嘆いても、何も変わらないことなんて分かっている。虚しさが一層強まるだけだ。
もう直ぐ逢魔が時だ。
そろそろ神社に向かって歩き出さなければ、裏の社を開けるのが遅くなってしまう。三門さんには休んでいてほしいから社を開ける準備はすべて私ひとりでするつもりだ。けれど顔を合わせるのがまだ少し気まずくて、足取りはどんどん重くなる。
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