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ふたりはおもてら町の駅をこえてもさらに歩き続けた。ちらりと見えた仁吉さんの表情が険しくて、声をかけることができないままここまで来てしまった。
一体どこへ向かっているんだろう?
ふたりはそのまま歩き続け、町のはずれまで来た。結守神社の裏にある山と対になるようにしてもうひとつ大きな山が広がっている。山の入り口に立った仁吉は袖手して目を細めると山を見上げる。
「久しぶりやなあ、生きてるうちは二度と来ん場所や思うてたけど」
「……すまないな」
「やめてや、あんたに謝られるとか気直悪うてかなわんし」
「行くぞ」
そう言ってふたりは山に消えていく。
慌てて駆けよると、驚いたことにそこはけもの道ではなく舗装された石造りの階段が上まで伸びていた。見上げれば、朱色の小ぶりな鳥居が凛として立っている。
全体的に鬱蒼として手入れはされていない感じに見えるが、まるで────。
「結守神社そっくり……」
恐る恐る石造りの階段をのぼる。
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