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目を見開いたままその場から動けずにいると、本殿の裏の方からみくりの声が聞こえた。はっと我に返り、静かに本殿の裏に回る。ふたりの姿を見つけた。神社の敷地を抜けてさらに山の中へと入っていく。
何かを隠すように生い茂る草木をかきわけながら進むと、その先に小さな祠を見つけた。木陰から二人の様子を窺う。
ふたりは祠の前に立った。仁吉さんはその場にしゃがみ込み、何かを拾い上げた。注連縄だ。真っ二つに切れているように見える。
もっとよく見ようと一歩前に出たその瞬間、足元にあった小枝が音を立てて折れた。
「誰だっ!」
みくりと仁吉が勢いよく振り返る。咄嗟に木陰に隠れて口を塞いだ。ばくばくと心臓が波打つ。
「様子を見てくる」
「────ええって。ほっとき。どうせ怖いもん知らずの子猫やろ。子猫ちゃん、それ以上首突っ込んだらどうなっても知らんで」
その声の低さにぞっとした。咄嗟に両腕を抱きしめる。
気付かれた。仁吉さんは私だって気が付いている。
「暗くなる前に帰りや」
その言葉を聞き終える前に、逃げ出すようにその場を飛び出した。
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