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その日の夜は一度も三門さんと顔を合わせる機会がなかった。ずっと私室で眠っていると、面倒を見に来てくれたババから聞いた。日頃の疲れもたたっているのだろうとも言っていた。
翌日は、三門さんのことはババに任せて私は学校へ向かった。
最寄り駅できょろきょろと辺りを見回す詩子を見つけ、「おはよう」と声をかける。詩子は驚いたように目を見開き、そして勢いよく私に抱きついた。
「う、詩子……? いきなりどうしたの」
「麻のばかーっ」
ぎゅうぎゅうと抱きしめられ、彼女の肩を「ギブギブ」と叩く。
「どうして昨日何も連絡くれなかったのよ! 死ぬほど心配したんだから!」
「連絡……? あ、ごめん、昨日は三門さんが倒れちゃって、一日中バタバタしていたからスマホを見るタイミングがなくて」
「え、三門くん倒れたの? 大丈夫なの……って、違う! ばかばかばか! どれだけ私が心配したと思ってるのっ」
ぽかぽかと肩を叩かれて、誤ることしかできない。
たった一日休んだだけでもこれだけ心配してくれるなんて、詩子は本当に優しいな。そんな考えは詩子の一言によって直ぐに打ち消された。
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