伍章 三匹の神使 中編

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 「聞いているでしょ、神隠し事件のこと。私は麻がそうなったんじゃないかって気が気じゃなくて」  「神隠し事件?」  物騒な単語に思わず聞き返した。  「知らなかったの!? 昨日はみんなその話題で持ち切りだったんだよ」  ホームで電車を待ちながら、その“神隠し事件”の話を聞いた。  二日前、おもてら町にひとつだけある小学校の児童が数人行方不明になった。  行方不明になった子どもたちは学年もばらばらで何の共通点もなく、消えてしまったその日もいつも通りの様子だったらしい。そしてその日、みんな同時に消えてしまったのだ。夜通し大人たちが総出で探し回ったが誰一人として見つからず、警察に届けを出す事態にまで発展しているのだとか。  誰かが”神隠しみたい”と呟いたことによって皆がそう囁くようになったらしい。  「昨日の夜も、また行方不明になった子が出たんだって。小学校と中学校は臨時休校だよ」  「そんなことが……」  「私たちも短縮授業になるかもって、昨日のホームルームでスイスイが言ってたよ」  怖いね、そう零した詩子に上の空で相槌を打つ。  三門さんが倒れたことと、今回の神隠し事件。どうしてもこのふたつが、関係がないようには思えないのだ。
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