伍章 三匹の神使 中編

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 部室もとい生物準備室の扉を開けると、中には雪ちゃんと富岡くんがいた。  「おっ、ふたりも来てたんだ!」  そう言いながら中に入る詩子に続いて私も中へ入ろうとしたその時、  「────な、中堂、さん……」  後の方で名前を呼ばれて首を傾げながら振り返る。廊下の真ん中で仁王立ちしている篠の姿があった。私と目が合うなり気まずそうにさっと目を反らす。何かを言いたそうに口ごもる。  「何……?」  先日罵られたことが尾を引いているのか、口調が少しだけ冷たくなった。あの時は篠が泣いていたからか怒りは湧かなかったけれど、今思い出せば散々な言われようだったし、私だって少しは怒ってもいいだろう。  私のそんな態度にカッと顔を赤くした篠は「謝るつもりはないから!」と私を睨む。そんな態度にさすがにムッとして、  「それを言いに来たの?」  と一層冷たく返す。  「ち、違うわよ! 貴方に、聞きたいことがあって」  また口ごもる篠はばつが悪そうに目を伏せた。
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