1302人が本棚に入れています
本棚に追加
「……三門さま、大丈夫なの」
毎日社頭に出て参拝に来る妖たちと交流している三門さんが昨日の夜は社頭に出なかったことで、妖たちに三門さんが倒れたということはあっという間に広がった。
三門さんの代わりに社の仕事をこなしていた健一さんは、「ただの風邪だよ」と妖たちに伝えていたが、皆何かを感じ取っているのかどこか不安そうだった。
「ただの風邪だよ」
「嘘! 夜明け頃に、みくりさまが気を失った三門さまを運んでいるところを見た妖がいたって!」
思わず目を見開く。そんなことまで広まっていたんだ。
「……ほんとだってば。健一さんも言ってたでしょ」
「三門さまに何があったの!」
「だからっ」
「────お前ら、煩い」
第三者の割り込みによってヒートアップしかけた言い争いが止まる。勢いよく振り返ると、眉間に皺を寄せた賀茂くんが立っていた。
賀茂くんの正体を知っているのか、篠は一瞬顔を強張らせて一歩後退る。そんな姿を一瞥し、賀茂くんは私に向き直った。
最初のコメントを投稿しよう!