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「それでさー、サマンさんがそん時に言ったんだよ、「そんなことあるかいな。うわっ、ほんまや!」って!」
あははは、と富岡くんの笑い声が冷え切った空気の部室内に響く。それに合わせて詩子と私が笑い、何とか場の雰囲気が保たれている状況だった。普段声をあげて笑わない雪ちゃんでさえ、気を遣ってくすくすと笑っている。こういう時に富岡くんの明るさはありがたい。
冷え切った空気を作る張本人たちは不機嫌な顔でむっつりと口を噤んでいる。
賀茂くんは部屋の隅で腕を組み窓の外を眺め、篠は机の木目に視線を落として黙っていた。
笑い声が止むと沈黙が流れた。詩子たちが困惑気味に私に視線を送る。私は小さく息を吐いた。
「……賀茂くん、私に話があるんだよね?」
「ああ。だがここでは話せない。だから一緒に来いと言った」
きっぱりとそう言い切った賀茂くんに苦笑いで肩を竦める。
「なんだよお前ら! ひそひそ内緒話なんかしちゃっていやらし~。あははは、は……なんか、すみません」
冷え切った目で睨みつけられ、富岡くんはしゅんと肩を落とした。
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