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「中堂も、悪かったって自覚はあるんだよな? 分かってると思うけど、俺だって仲がいい友達でもそう簡単に正体はばらさないし、人づてに正体がばらされているなんて知ったら腹が立つ」
「うん……そうだよね。本当にごめんなさい。簡単に口にすることじゃなかった」
だんっ、と篠が机を叩く。
「今更謝られても困りますし、謝られたからと言って絶対に許すつもりはありませんからっ! 私がいままで、どれだけ苦労して正体を隠してっ」
「葛葉、気持ちは分かるけれど、今は」
「自由気ままに生きてきた貴方に何が分かるんですか!? 私は、私は正体がばれたら二度と……っ」
言葉を詰まらせた篠はばっと顔を反らすと勢いよく部室を飛び出した。
あ、と手を伸ばすも、その手は力なく膝の上に落ちる。
賀茂くんは一つ溜息を吐いた。
「今更謝られても、というのは葛葉と同意見だ。でも知られてしまったことはもうどうしようもない」
「……本当にごめんなさい」
「もう謝るな、くどい」
謝ることを拒否される方が苦しかった。膝の上で掌を握り身を縮める。
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