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「ねえねえ。私はそんなに妖の世界には詳しくないから分からないんだけど、人を襲ったり攫ったりする妖が現れたってことでいいんだよね?」
「よく知らない奴が首を突っ込むな」
「何よ! 乗り掛かった舟でしょ!」
除け者にするような言い方が気に入らなかったのか、詩子は机を叩いて身を乗り出した。
賀茂くんは煩わしそうに息を吐く。
「……現れたわけではない、突然狂暴化し始めたんだ」
そう言えば、みくりが「瘴気にあてられた妖に襲われた」と言っていた。
「いや、瘴気は悪影響を及ぼすが、狂暴化に直接つながることはない。あてられた苦しさにもがき暴れる妖はいるが、瘴気の影響で力が増幅したり無差別に人を襲うようなことにはならない」
どういうこと? じゃあ、みくりが嘘を吐いたということ?
どうしてそんなことで嘘を吐く必要があるの?
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