伍章 三匹の神使 中編

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 その日は職員会議の決定で、三限目が始まる少し前に帰ることになった。  詩子と雪ちゃんは両親と一緒に行方不明になった子どもたちを探す手伝いに、富岡くんは知り合いの妖たちに話を聞いてみると言ってくれた。  少しでも力になれたら良いんだけど、と言ってくれたみんなの気持ちがとても嬉しかった。  私にもできることを探そう。そして三門さんが回復したら、ちゃんと話し合いたい。そんなことを考えながら社へ続く石段を上っている時だった。  「いい加減にしなっ、みくり!」  階段の一番上で怒鳴り声がした。声の主はふくりだ。いつもおっとりしているふくりが声を荒げるなんて珍しい。  階段を駆け上がると、本殿の前でみくりとふくりが言い争う姿があった。そのそばには寝巻姿で肩に羽織をかけた三門さんが立っている。  「私も神使なんだよ、それなのに“言えない”? ふざけるんじゃないよ!」  くわっと牙を剥きだしにして毛を逆立てるふくり。
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