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「言えないんじゃないんだ、ふくり。今言ったことが全てなんだよ」
「事実なら私から目を反らさずに言ってごらんよ三門! 上手く嘘を吐く自信があればの話だけれどね? みくりも何か言ったらどうだい!?」
「これ以上、お前に話すことはない」
ふいっと顔を背けたみくり。その瞬間、ふくりはみくりの首元に噛みついた。きゃん、と悲鳴を上げたみくりが地面に転がる。転がりながら揉み合いになった。
目を見開き慌てて駆け寄る。
「あ、麻ちゃん危ないから離れてっ」
三門さんの制止も間に合わず、ふくりの鋭い爪が伸ばした手をひっかく。
「っ、いた……」
私の声に、はっとふくりが動きを止めた。私と目が合った瞬間、勢いよく駆け出して社を飛び出した。
追いかけようとしたところ、手首を掴まれた。三門さんは無言で小さく首を振る。唇を噛み締めてふくりが走り去った方向を見つめた。
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