伍章 三匹の神使 中編

32/122
前へ
/507ページ
次へ
 「ほんと、余計な世話ばっかり焼くんだからあの人は」  はい完成、と最後に紙テープで隅をとめると、三門さんは姿勢を正した。  「ごめん」  え? と目を瞬かせた。三門さんが突然頭を下げたからだ。  「何か力になれるかもしれない、ってこの社に呼んだのは僕なのに、妖には深く関わってほしくないって言ったり、でも裏の社に連れて行ったり妖たちに会わせたり。矛盾しているって分かってる。すごく自分勝手だってことも分かってるんだ」  三門さんは眉を下げて笑う。  「麻ちゃんは覚えてないかもしれないけれど、今の僕がいるのもこうして神主になれたのも、全部麻ちゃんのおかげなんだよ」  「私の……?」  「声が出なくなった僕に、声を取り戻すきっかけを作ってくれたんだ」  昔を懐かしむように三門さんは目を細める。  初めて聞いた話だった。  私が、三門さんの声を取り戻すきっかけに……?
/507ページ

最初のコメントを投稿しよう!

1303人が本棚に入れています
本棚に追加