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三門さんは笑って、救急箱を抱えて立ち上がった。そろそろ裏の社を開けようか、そういい社頭に出ていく。
「あ、」と伸ばしかけた手はやはり届かず宙を掴んだ。
『お願いだから』
懇願するような必死で強い声色と、痛いほどに握られた手を思い出す。
私は本当に何もしてはいけないの?
三門さんが怪我をして帰ってきて、ふくりが社を飛び出して行って、外では子供たちが行方不明になって、人も妖もみんな不安を抱いているというのに。
いつも私を助けてくれる三門さんや、私の力を怖がらずに友達でいてくれる詩子や雪ちゃんや、温かく迎え入れてくれた妖の皆を守れる力があるはずなのに。
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