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裏の社が開くと、妖にはまだ早い時間帯にも関わらず多くの妖たちが鳥居をくぐって参拝に来た。三門さんはそんな彼らを笑顔で招き入れた。
「三門さま……! 心配したんだよ、気が触れた妖にやられて傷だらけで倒れていたって聞いたもんだから! それにあの裏山の騒動……一体何事だい!?」
「青女房、心配をかけたね。でも誰がそんなことを言ったんだい? 僕は夜道で懐中電灯を落としたせいで、木の根で転んでそのまま少し落ちて溝にハマって傷だらけになってしまっただけなのに」
「はあ? 何だいそりゃあ! いつものドジ踏んじまっただけじゃないかい!」
やれやれ、いつものことじゃないか、心配して損した。妖たちは安心したように肩の力を抜いて笑うと三門さんの肩を遠慮なく叩く。
楽しそうに談笑する彼らを横目に、私は境内を歩き回ってふくりの姿を探した。
昼過ぎに社を飛び出してから一度も戻ってきていない。
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