伍章 三匹の神使 中編

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 みくりに心当たりがないか聞いてみたけれど「そのうち帰ってくる」とだけ言ってとりあってもらえなかった。  どこに行っちゃったんだろう。  温厚なふくりが声を荒げるのは、仁吉さんに初めてあった時以来だった。何がそんなにもふくりを怒らせたんだろう。  あんな様子を最後に見たからか、どうも少し気がかりだった。  「それにしても、聞いたかい烏天狗殿」  「ああ、何でも人の子が攫われているとか」  三門さんたちを遠巻きに、ひそひそと話す妖たちがいる。  「人の子だけじゃない。最近見かけない妖が多いと思わないかい」  「なんと、まさか」  「ああ恐ろしや恐ろしや。一体何が起きているのやら」  どういうこと……?  人の子だけじゃないって。妖も行方不明になっている子がいるの?  「いやだねえ、しばらくは身を潜めておこう」  「そうだな、それがいい」  そういうと彼らは呼び止める間もなく足早に社を出て行った。  どこか落ち着かない様子の裏の社の夜は更けていった。
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