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おとら狐の仁吉。
彼とは三回ほどあったことがある。
黄土色の長髪に獣耳、糸のように細い目をした妖だ。いつもは幽世と現世の狭間の世界で薬師をしているようで、富岡くんの一件があった時に三門さんに紹介してもらった。
いつも飄々としていて、かと思えば急に刃物のように鋭い空気を纏う、掴めない性格の妖だった。
「まさか、だって。だって仁吉さんはおもてら町から追放されたんだよね?」
「……ああ、そうだね。見習いが期間が明けるころに、あの狐は犯してはいけない罪を犯した」
罪……? それは一体。
脳裏にあの言葉がよぎった。幽世からの帰り際、私の手を掴んで不敵に笑った仁吉さんはこういった。
『うちな、結守の神主、殺したことあるねん。』
もしも、もしも本当にこの言葉が事実で、ふくりがいう罪が、それに当てはまるのだとしたら。
そこではっと気が付いた。ふくりの体が小刻みに震えている。何かを堪えるように強く目を瞑っていた。
「もう、寝ようか麻」
語尾が震えている。私はただうん、と頷いて布団を引き上げる。冷たいふくりの体を抱き寄せた。
それ以上首突っ込んだらどうなっても知らんで。
仁吉さんの言葉が、何度も脳裏で繰り返された。
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