伍章 三匹の神使 中編

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*  「ふくり、みくり、仁吉。今日から禰宜と働くことになった喜助だよ。皆で助け合って、ユマツヅミさまにお仕えするんだよ」  喜助と呼ばれる男が結守神社にやってきたのは、桜が満開に咲き誇るある春のことだった。  細い目にひょろりとした背丈の男で、嘉助は先代の神主のとなりで恥ずかしそうに頬を掻いて頭を下げた。  その当時、43代目結守神社神主であった松野伊三郎は次の正月で米寿を迎える年配者だった。  松野本家でも次期神主への期待が高まっていたが一向に現れる気配もなく、そこで松野の遠縁にあたる喜助を禰宜として迎え入れることになったのだ。  年は二十三、よく働きよく学ぶ青年だった。特に取り柄があったわけでも、秀でる部分があったわけでもないが、社に来る妖たちにも嘉助は直ぐに馴染んでいった。
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