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賑わう社頭の中心に立つ嘉助を遠巻きに見ていた三匹の狐たちが口を開いた。
「あの者、大した才はないが社を任せるには事足りるといった具合か」
「せやなあ。まあユマツヅミさまも、見切りをつけたら直ぐに次の神主を選ばはるやろ」
新しい禰宜にあまり興味がないのか、みくりと仁吉は嘉助をそう評した。
「みなに好かれるのも、また才のひとつだよ。なにより彼は努力を惜しまない人だ」
「なんや、ふくりは嘉助が気に入っとるん? えらい評価するやん」
「私は思ったことを言っただけだよ。それに────」
そこで言葉をとめたふくり。仁吉はちらりと横目で様子を窺うも、それ以上なにも話さないふくりに関心がなくなったらしくひとつ欠伸を零した。
────それに、彼は私に似ている。
ふくりはそう思っていた。
仁吉やみくりと比べると何もかもが劣っていた。彼らに勝てるところは何もなかった。そんな自分と、先代の神主たちに比べて言霊の力も薄く、ふたつ目の力も持ち合わせない嘉助はどこか似ているところがあるように思えたのだ。
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