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強く目を瞑ったその時、
ドンッ、と横腹を蹴り飛ばされてふくりは短い悲鳴を上げた。
「うわあっ」
自分の悲鳴と同時にもう一つの悲鳴が上がる。ふくりの真横にどすんと尻もちを付いたのは嘉助だった。
「ふくりか!? すまない、誰もいないと思って足元を留守にしていた。わざとではないんだよ……!」
蹴飛ばした横腹の毛並みを必死で撫でつける嘉助。
「……いいよ、私がここにいたのが悪い」
そう言えばほっと息を吐く嘉助。思っていることが良く表情に出る男だ。
目の高さを合わせるように膝を付いた嘉助。
「して、ふくりは何故こんなところに居るんだい。休むなら社の中が一番涼しいだろうに」
「嘉助だって」
「俺は、少し気合を入れて気持ちを立て直すために、水を被ろうと思って」
怪訝な目で嘉助を見上げるふくり。嘉助は恥ずかしそうに頬を掻いて笑った。
「伊三郎さまに叱られたんだ。またつまらない失敗をしてしまって。どうも俺は容量が悪い」
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