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それから嘉助は、ふくりが伊三郎に叱られて社のどこかに隠れると、必ず金平糖を片手に探しに来るようになった。
「今度はここにいたのか、ふくり」
本殿の軒下を覗き込んだ嘉助が呆れたように笑ってそう言った。
「おいで、金平糖があるんだ。家鳴たちに食べられる前に、一緒に片付けてしまおう」
嘉助はそう言って手を差し伸ばした。
そしてふたりはいつもと同じように縁側に腰掛けて、金平糖を頬張る。
「美味いだろう、ふくり。今日の金平糖はいつもの二倍の値段がしたんだぞ」
「嘉助は本当に金平糖が好きだね」
ああ大好物さ、と嘉助は宙に金平糖を放り投げて口を開ける。金平糖は嘉助の額にこつんと落ちると、「ああっ」という嘉助の叫びも虚しく地面を転がっていった。
そんな姿に小さく吹き出したふくりは丸めていた体を起こして座り直した。
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