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それから嘉助とふくりは、ともに稽古を重ね、たまには金平糖を取り合って喧嘩し、辛いときは傍に寄り添って、まるで兄弟のように過ごした。
「見てみろ。時期神主の嘉助さまと神使さまがたが話しておられる」
「まことに仲が宜しいようで」
「とりわけ、ふくりさまとはご兄弟のようにお過ごしであられるとか」
「これで結守も、もう半世紀は安泰でございますな」
そんなふたりの姿に裏の社の妖たちも喜んでいた。
そして嘉助が社に来て三度目の秋。その日は月あかりの眩しい夜だった。
「────嘉助? 起きているのかい」
ふくりは嘉助の部屋の前でそう声をかけた。
直ぐに障子がすっと開いて、寝間着姿の嘉助が顔を出した。
「ふくり。どうした?」
「寝付けなくて歩いていたら、部屋に明かりが灯っていたから」
「書き物をしていたんだ。もう直ぐ眠るよ」
「そうなんだね」
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