伍章 三匹の神使 中編

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 ────そうだな、ではまず、ふくりたちは一体何歳何だい? 百と十八、少し前までは阿紫霊狐だったよ。 阿紫霊狐って……、ふくりは妖でもないただの狐だったのかい! そうだよ、仁吉は始めから妖だけれど、私とみくりはただの狐だった。  一歳から百歳までの狐を阿紫霊狐といった。それから、年を重ねるごとに地狐、気狐、仙狐、天狐、空狐、と呼び名が変わる。  神使は年齢関係なく、見習いの期間が終了すると気狐になることになっている。  「なんだ、喋り方が随分大人びているから年寄りかと思っていた」  「ただの狐には百年は気が遠くなるような長さだったんだよ」  「なるほど、ならばふくりは妖で言うところの赤子も同然なんだな」  よしよし、腹を叩きながら子守唄を歌ってやろうな。  突然赤子に語りかけるような口調でそう言った嘉助は、笑いながらふくりの背中をとんとんと優しく叩いた。
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