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「いや、良いんだ。そう見えているなら何よりだ。そうか、俺は優しく見えるのか」
嘉助はくすくすと笑った。
「変な嘉助だね」
「なに、俺はそんなにいい人間ではないからね。お前が見ている俺の優しい所は、俺のたったの一部にしか過ぎないんだよ」
「嘉助……?」
嘉助は目を弓なりにすると、布団から這い出て枕元の行燈の火を吹き消した。
「もう寝よう。おやすみふくり。ここで眠りたければ、好きにするといいよ」
嘉助は布団に潜り込んで、こちらに背を向け寝転んだ。
「ありがと、おやすみ嘉助」
その背中に寄り添うようにして、ふくりは丸まって目を瞑った。
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