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翌朝、ふくりは入り込む隙間風で目が覚めた。
朝の澄んだ空気が半開きになった障子の隙間から入り込んでいる。外はまだ薄暗く、朝日が昇るまでもう少しといったところだ。
ひとつ伸びをしながら起き上がると、頭の奥に鈍い痛みが走り思わずよろけた。夜更かしをしてしまったかもしれない。
かぶりを振って痛みを誤魔化し、隣を見る。嘉助の姿はもうなかった。布団が冷たくなっているので、随分と前に起き出したらしい。
真面目な嘉助のことだから、朝稽古でもしているのだろうか。
ならば自分も、とふくりは部屋を出る。
廊下を歩きながら、ふと社がいつもよりも静かであることに気が付いた。社に住み着く妖たちの声がしない。いつも日が昇る前までは、必ずどこかで妖たちの声が聞こえていたはずなのに。
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