伍章 三匹の神使 中編

67/122
前へ
/507ページ
次へ
 *  「────っ、」  息苦しさに飛び上がるように起きた。首を絞められるような息苦しさだ。喉を押さえながら息をする。頬が涙で濡れている。  久しぶりに妖の夢を見た。ふくりの過去だった。そして私が感じたこの苦しさは、ふくりの苦しさなんだ。  ふくりはずっとこんな苦しさを抱えて過ごしてきたの……? 大切な人を失って、ただ恨んで憎んで、苦しみ続けていたの?  そんなの辛すぎるよ。  穏やかな笑顔の裏で、こんなに身を削る思いをしていたなんて。  「────っ、う、ああ……」  うめき声にはっと我に返った。私の隣で眠っていたふくりが顔を顰めて、呻き声をあげている。  「ふくり、ふくり……!」  背を叩いて名前を呼ぶ。何度か呼びかけると、ふくりははっと目を開いた。  何度か瞬きをして、私を見上げる。
/507ページ

最初のコメントを投稿しよう!

1307人が本棚に入れています
本棚に追加