伍章 三匹の神使 中編

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 「ふくり、大丈────」  「麻、どうしたんだい。大丈夫かい?」  「え……?」  ふくりは起き上がると私の膝に手を付いた。  「泣いているじゃないか。怖い夢でも見たのかい?」  夢で見た先代の神主の言葉を思い出した。  『気の弱い者は、恐れを知っているものだ。だから慎重に行動することができる。何かに恐れる人々の気持ちを理解することができる。』  ふくりは嘉助にそう言ったけれど、その言葉はふくりを表しているようだった。  自分の弱さを知っている、だからふくりは弱っている誰かの心に寄り添うことができる。  じゃあふくりはいつ、誰かに甘えるのだろうか。誰かを頼って、弱い所を見せるのだろうか。  両手を伸ばしてふくりを抱きしめた。ふくりは目を細めて私の頬に顔を寄せる。
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