1307人が本棚に入れています
本棚に追加
「ふくり、大丈────」
「麻、どうしたんだい。大丈夫かい?」
「え……?」
ふくりは起き上がると私の膝に手を付いた。
「泣いているじゃないか。怖い夢でも見たのかい?」
夢で見た先代の神主の言葉を思い出した。
『気の弱い者は、恐れを知っているものだ。だから慎重に行動することができる。何かに恐れる人々の気持ちを理解することができる。』
ふくりは嘉助にそう言ったけれど、その言葉はふくりを表しているようだった。
自分の弱さを知っている、だからふくりは弱っている誰かの心に寄り添うことができる。
じゃあふくりはいつ、誰かに甘えるのだろうか。誰かを頼って、弱い所を見せるのだろうか。
両手を伸ばしてふくりを抱きしめた。ふくりは目を細めて私の頬に顔を寄せる。
最初のコメントを投稿しよう!