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「大丈夫だよ、麻。もう夜が明けるから」
「ふくり、ごめんなさい。私ふくりの過去を夢で見たの」
「私の過去……? ああ、そうか、だから。嫌なものを見せてしまったね。ごめんね麻」
「ふくりは悪くない……! 何も悪くないから謝らないで!」
ふくりは小さく笑うと私から離れる。
「気にしなくていいんだよ、もう百年以上前の話だ。私だって、覚えていないところも沢山ある」
嘘だ。
気にしなくてもいいような過去なら、夢にまでみて魘されるはずがない。
長い時間が経っていてもあんな苦しさを抱えているはずがない。身が引きちぎれそうな、息もできないほどの苦しさが胸の中に残っているはずがないんだ。
「そんな風に言わないで。大切なひとだったんでしょう」
「……ああ、そうだね。大切な人だった」
「ふくりの大切な人を、ふくり自身がそんな風に言っちゃだめだよ」
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