伍章 三匹の神使 中編

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 「大丈夫だよ、麻。もう夜が明けるから」  「ふくり、ごめんなさい。私ふくりの過去を夢で見たの」  「私の過去……? ああ、そうか、だから。嫌なものを見せてしまったね。ごめんね麻」  「ふくりは悪くない……! 何も悪くないから謝らないで!」  ふくりは小さく笑うと私から離れる。  「気にしなくていいんだよ、もう百年以上前の話だ。私だって、覚えていないところも沢山ある」  嘘だ。  気にしなくてもいいような過去なら、夢にまでみて魘されるはずがない。  長い時間が経っていてもあんな苦しさを抱えているはずがない。身が引きちぎれそうな、息もできないほどの苦しさが胸の中に残っているはずがないんだ。  「そんな風に言わないで。大切なひとだったんでしょう」  「……ああ、そうだね。大切な人だった」  「ふくりの大切な人を、ふくり自身がそんな風に言っちゃだめだよ」
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