伍章 三匹の神使 中編

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 仁吉の言ったことは本当だった。  彼は昔、結守神社の禰宜を手にかけ、この地を追放されることになった。夢にみたあの神社は昔別の場所にあった結守神社で、みくりと仁吉を追いかけた日に見たあの場所がそこなんだろう。  なぜだろう、妙な違和感が残る。夢の中でふくりが叫んだ、「お前たちは何を隠しているんだい」という言葉だ。  その言葉通り、私もみくりたちは何かを隠しているように思える。  嘉助さんを殺した仁吉に対して、ふくりは恨みを抱いている。  けれど、みくりは以前仁吉に会った時も、仁吉に対して特に何かを抱いているようなそぶりは見せなかった。禰宜を殺し追放された昔の仲間と会うにしては、あまりにも”普通”だった。  もしも私がその立場だったら、「どうしてこんなバカなことを」と怒ったり、「なんて愚かなことをしたんだ」と哀れんだりするはずだ。
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