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さあっと風が吹き抜けて、鎮守の森の木々たちが揺れる。
正確に言えば、“元”だけれど。ここは間違いなく昔の結守神社があった場所だ。嘉助の一件があってから今の場所に移したのだろう。神社は“穢れ”を嫌う神聖な場所だから。
拳を握りしめて屋根の上に座る仁吉を見据える。
真意の読めない笑みを浮かべ私を見下ろしている。
「忠告したよな、これ以上首は突っ込むなって」
「でも、私」
「こっちも、ちょこちょこと子ネズミに動き回られると迷惑でしゃあないんやけど」
言葉に詰まって俯く。
「ここが引き時やで」
「に、仁吉さんは、一体なにものなんですか……? 何を知っているんですか?」
「それを知ってどうするつもりや」
「私にできることを探します。そして三門さんを助ける。ふくりも、ここに住む妖たちもみんな」
仁吉はくつくつと笑った。
「大きく出たなあ、ひとりじゃろくになんもできん小娘が。────でも、まあええわ」
え、と目を見開く。
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