1307人が本棚に入れています
本棚に追加
「妖は約束を破らへん生き物や。何が何でも約束は守る。それこそ死んでもな。妖と約束を交わすということは、あんたもそれなりの覚悟持ってもらわなあかん」
「……本当に?」
「絶対や。くどいな」
唇をきゅっと結んで顔をあげる。
「……私の名前は、中堂麻。植物の麻」
ほう、と仁吉は目を細めた。
「魔よけの草の名前やな。そう言えば、あんたのオカン、妖のことごっつ嫌いやったな」
「約束は守ったよ」
「そうせかすなや」
次の瞬間、ばっと手をあげ私の頭を掴むように額に触れた。目の前がぐにゃりと歪み、意識が遠のく感覚に襲われる。
「な、にを……」
「口で言うより、見た方が早い。あんた去見の力があるんやろ。さくっと見てき」
────あんたの知りたがってる、隠された過去の全部や。
その言葉を最後に意識の奥に吸い込まれた。
最初のコメントを投稿しよう!