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「仁吉、いるか……っ」
襖の外で名前が呼ばれる。這うようにして外にでると、同じように顔を顰めたみくりがそこにいた。
「同胞が、助けを求めている。社の近くだ。だから我々の感覚に繋がったんだろう」
神使には社の中や近くで異変が起きた時に、感覚でそれを知らされることがある。招かれざる者が社へ入って来た時は、全身を撫でられるような感覚がすると聞いた。
これもその類いだろうと予想を付ける。
同胞がこのような苦しい思いをしているのかもしれない、そう思うと気持ちが急いだ。
頭に響く悲痛な叫びと、自分たちに繋がった感覚は徐々に薄まっていく。
「行くで」
「ああ」
ふたりは社を飛び出した。
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