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空は生憎の曇天で、月明りは分厚い雲の後ろに隠れている。大した風は吹いていないのに、鎮守の森が騒がしかった。
みくりと共に社の外へと続く石段を駆け下りる。真ん中まで来てふたりは同時に足を止めた。
度々感じていた禍々しい気配が近い。今すぐにでもこの場から逃げ出したくなるほどだ。
「仁吉、鎮守の森の近くだ」
「……ほんまやな。なんやこの生臭い感じは。まるで」
誰かが血まみれになっとるみたいな匂いや。
言葉に出すにはおぞましく、胸の中で呟いた。
二匹は顔を見合わせて足を踏み入れた。
匂いのもとを辿りながら森を横切る。やがて裏の鳥居が見えて、ふたりは足をとめた。
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