伍章 三匹の神使 中編

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 誰かがいる。  鳥居のすぐ外にある人影。土の上に膝をつき、忙しなく手を動かしている。何かを咀嚼し啜る音が辺りに響く。その人物の足元に転がってある提灯が、その者の手元を映し出す。指の隙間から滴り落ちる赤い液体。  あれは何だ。  横たわる小さな影には、一つ目と小さな角が見えた。鬼の子どもだ。けれど四肢がない。胴とつながっているはずの手も足もそこにないのだ。血の気の失せた頬にはたくさんの涙のあとが残っている。半開きの目には光が灯っていない。血が垂れる口は何かを言いかけたように開いたまま硬直していた。  ああ、そうか。呼んでいたのだ。  あの時の声は、この子どもの声だったのだ。自分たちに助けを求めるために、精一杯口を開いて叫んでいたのだ。  思わず後ずされば、落ち葉がかさりと音を立てる。  勢いよくその人物が顔をあげ、提灯の光が顔に当たる。裏闇の中で映し出された顔に、言葉が出てこなかった。
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