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「────……いや、何を。何、してるん、嘉助」
その両手には子どもの四肢を掴み、口元を赤く染める嘉助がいた。
嘉助はいつも縁側に座って談笑しているときと同じようにニッと笑った。
赤く染まった歯に、胃の中のものが逆流する感覚に襲われる。後ろでみくりが嘔吐くのが分かった。
「なんだ、もう勘付かれてしまったか。当代の神使たちは出来が悪いと思っていたんだが」
嘉助は普段通りの口調でそう言った。そして手にしていた四肢を放り投げると、おもむろに立ち上がる。
一歩下がって、体制を低く取った。睨んだまま後ろのみくりに声をかける。
「おい、みくり、げえげえ吐いとる場合ちゃうぞ。今すぐ動けるか」
「……っ、ああ。動ける」
「お前は伊三郎をたたき起こして守れ」
みくりは何か言いかけたが、「分かった」と短く返事をして社へ駆け出した。
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