嫌いなモノ

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ほんの少しの空間だけど、確かにここからは星が見える。それほど多くは見えないけど、都会の空で星が見えるのは貴重である。 「ほんとだ」 分かっていてもなかなか見上げることのない夜の空。空気が澄んでいるからか、ハッキリと明るい星が見えた。 見上げていると、鼻がむずむずした。 「クシュン!…」 「寒いよな。大丈夫?」 くしゃみする私を気遣ってくれる。小さく頷いた。マフラーだけでなく手袋も持ってくれば良かったかな。かじかむ手を擦り合わせる。 バッグは肩から下げているが、その反対の手を松野兄が握る。思いがけない行動に顔をあげると、すぐ近くに彼がいた。いつの間に近づいたのか。 見上げた先にあった松野兄の顔の近さに目を見開いてしまう。手を握られるなんて、小学生の時以来かもしれない。 こういった状況の場合、どうするのが正解?今夜は分からないことばかりだ。彼は目を細めて、柔らかく笑う。 「こうしていれば、少しは暖かいだろ?」 握ってきた手は私に温もりを与えてくれた。でも、有り難く受け入れられない。いつもいつも、なぜかこの男に調子を狂わせられる。 振り切ろうとするのに、強引に引きずり込まれる……そんな感じだ。
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