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手なんか繋ぎたくない、嫌だ。
一緒に歩くのだって、嫌だ。
だって、私はこの人のこと、嫌いだから。
拒絶する気持ちが強いというのに、握られる手を振り離せなかった。相手の力が強いのもあるけど、家までのあと5分くらいの距離だったから、静かな夜に揉めるくらいなら我慢しようと思った。
そう、我慢だ。決して、暖かいから離したくないわけじゃない。
どうでもいい言い訳で自分を納得させて、短い道のりを並んで歩く。
「なあ?」
「はい?」
「考え直した?」
「何を?……ああ、聖斗くんのこと?一応週末に会う予定ですけど」
今月の排卵期は来週に迫っていた。だけど、その前にいくつか確認したいことがあり、早急に会う約束を取り付けた。
「まさか、もうするつもり?」
「え?いえ、まだ……」
「するなよ」
繋ぐ手に力を入れて、私を自分の方へと引き寄せる。
「キャッ! 何をするんですか?」
引っ張られた私は、松野兄の肩に頭をぶつけた。
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