嫌いなモノ

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ただ者ではない? 確かにただ者ではなく、自分勝手で強引な嫌な男だ。 「嫌いなのよ、あの男」 「へー。男のことを今まで好きと言ったこともなかったけど、嫌いとも言ったことないよね?それなのに、嫌いというなんて…小夏ー!かわいい!」 なぜか興奮する秋絵が抱きついてきた。今の発言のどこにかわいいと言われる要素があった? 嫌いな男だって、今までもいたことが……あれ?ないかも。男に興味がなかったから、嫌いとも思ったことがなかった。 じゃあ、松野兄は初めて嫌いになった男かな。 「初めて言うかもしれないけど、あの男は本気で嫌いなの」 「あの男って、誰ですか?」 「えっ?……わあ、聖斗くん…」 今、誰かが店に入ってきたのは分かっていたけど、その客が聖斗くんだったとは思いもしてなかったから、突然話し掛けられて体が跳ねてしまった。 こっそりと春海くんが「小夏さん、来てますよ」と連絡したらしい。でも、聖斗くんと会う約束の日は、明日に迫っていたからわざわざ来なくても良かったのにと思う。
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