嫌いなモノ

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話を聞くと。松野兄は実家が近くにあるのにもかかわらず、大学入学とともに家を出て、一人暮らしをしているという。 理由は分からないけど、実家にいたくないという反抗心でもあったのかもしれない。だから、弟ともあまり連絡を取らないとか? 「兄は俺のことが嫌いなんですよ」 聖斗くんは、切なく笑ってからビールを飲んだ。 「嫌い?五才違いなら弟を可愛がるものじゃないの?」 こんなに優しくて、素直で、癒される笑顔を見せる聖斗くんを嫌うなんて、考えられない。 嫌われるのなら絶対に自分勝手な兄のほうだ。 聖斗くんは私の疑問に弱々しく笑ったけど、何も言わなかった。血の繋がった兄弟なのに、深い溝が出来ているようだ。二人の間には何があったのだろう。 私に二人の仲を修復することは出来ないけど、聖斗くんの辛い顔は見たくない。 どうして聖斗くんを嫌うのか問い詰めたいものだ。でも、嫌う理由なんて人それぞれかな。私も松野兄が嫌いだし。
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