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軽やかな音楽がなりひびく。
白毛に、金縁の黒い鞍をつけた、あまり大きくない馬がいっとう、太い柱の陰からまた姿をみせた。
一周ごとに、草太は片手をポールにしっかと巻き付けたまま、はじけんばかりの笑顔で手を振ってよこす。
上下の揺れが五歳の子にはちょっと、大き過ぎるのではないか、心配のあまり私は心からは笑えていないだろう、それでも、草太がぶんぶんと片手を振ってくれるたびに、それに応えて、こわばった笑みを浮かべて手を振り返す。
さいしょから、私もいっしょに乗ればよかったのだ。
草太は体も大きいし、落ちついているので七つくらいにはみられる。でも、一人で乗せるにはやはり、少しばかり小さかったのだ。一緒に向かい合わせで乗れる馬車仕立てのものもあったし、草太がそんな子どもじみたものはいやがるだろうから、せめて少し後ろの馬に乗っていてもよかったのだ。
そのせいで、私は草太を見失ってしまった。
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