序章 天使に恋した悪魔

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序章 天使に恋した悪魔

それは、美しく雪のように白く大きな翼である。しかし、翼の持ち主 大天使ミカエルは今4畳ほどしかない暗く狭い部屋で1人首輪を付けられ閉じ込められていた。弱り果てた彼女は先程より起き上がろうとしていた。が、動こうとするとめまいがおきて体が鉛のように動かない。ミカエルより先に聖なる力を得たサタンとの戦いでだいぶ体が消耗してしまった。 彼女が持ち合わせる力も大半奪われてしまったようだ 「お目覚めかい…?ミカエル…私の姫君…。」 「サタン…」 突如ドアが開き男が入ってきた。整った顔立ちで黒い衣装に身をまとい後ろにはミカエルと対照的な真っ黒な翼が生えた男が入ってきた。彼の目には目の前の純白の女しか見えてなかった。 その男、サタンはミカエルに片手で頬にフレ目を細める。 「なんでも与える。そなたの欲しいものなら。行きたい所へはどこへでも連れていく。そなたを私の1番にしよう。だから、どうか私だけのものになってはくれぬか?」 ミカエルは思う。悪魔たちの頭領としてその名を知れ渡らせたサタンだが、今自分に禁断の恋心を抱いてしまい、盲目になってしまっったばかりにその身を堕とそうとしている。愚かなことだ。 「サタン、あんたは悪魔たちの模範的存在。大天使であるこの私をこんな目に遭わせて、タダで済むと思うのかい?神はあんたにお怒りだよ。あんたの地位や力も何もかも失うことになるだろう。」 「それでも構わない。そなたが私の愛を受け取らないから閉じ込めたまでのこと。神はお怒りでもそなたへの愛は止められない。」 「こんな歪んだ愛!大天使と大悪魔が恋に落ちるだなんて、世の中の軸を変えてしまう!サタン、今ならまだ間に合う、私を解放するんだ、そうじゃなきゃ…。」 「私はそなたに勝ちそなたを得ることが出来た。そなたは負けた。負けてから泣き言をいうなどそなたらしくもないぞ。」 何を言ってもこの男には分からないようだ。ミカエルは体が段々弱るのを感じていた。当たり前だ世の中の軸に反することをしているのだから、その影響がミカエルの体に出てきていた。 「お願いだ、サタン…。苦しい。私を解放しなければ私が死んでしまう…。」 サタンは目を見開きあわてるような表情を見せた。 「苦しいのか?ミカエル?すぐに万能薬を持ってこよう。」 ああ、ミカエルは段々身体が弱っていく中この世に残した未練のことを考えた。多くの弟子の天使たち、見守ってきた地球上のいのち達。そして、自分を連れ去ったこの男。 「悪魔にしてはいい男だったんだけどな…私達は決して結ばれてはならない存在なんだよ…。」 サタンが薬を取りに急いで部屋に戻ってる時ミカエルは静かに息絶えた。 サタンが薬をとって部屋に戻ってきた時既にミカエルはこと切れていた。サタンは1人ただただ悲しんだ。 「私はなんてことをしてしまったんだ…。お願いします、神よ。もうミカエルを無理やり手に入れようなんて思いません。どうかミカエルをもう一度生き返らせてください…。」 すると、ミカエルの体が光り輝き動き出した。 「…ミカエル??ミカエル!」 「私はミカエルではない!」 聞きなれたミカエルの声だったがミカエルにはない威圧を含んだ声だった。 「もしや、あなたは…。」 「よいか、サタン…。そなたは決して許されぬ罪を犯した。悪魔の模範的存在でありながら、ミカエルに魅入られ閉じ込め世の軸を曲げたことでミカエルを死なせた!この罪は大きい…。」 「お願いします、私は死んでも構いません。地獄に落ち罪を償いましょう。でもどうかミカエルを生き返らせてください。」 「…いいだろう、しかしな、そなたにもう一度だけチャンスを与えよう。悪魔の身でありながら聖の象徴であるミカエルに惹かれたその心の美しさは讃えよう。罪は償ってもらうがな…。今から遥か先の未来、ミカエルは普通の人間として蘇る。それまでの間そなたは地球でずっと生き続けていなさい。彼女が生まれる時代になったらそなたもうまれかわらせる。そなたとミカエルはもう1度めぐりあうだろう。その時ミカエルにそなたはもう一度恋をするだろう。その時天使と悪魔の狭間が再び災いになるがミカエルと結ばれるかどうかはそなたしだいだ。」 そういうと、ミカエル…いや、神はサタンに向かって腕を振った途端サタンは人間の姿で地上に立っていた。サタンは突然のことに呆然と立ちすくしていたがやがて、神の言葉を思い出し街の方へと歩き出した。
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