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満月にほえるもの
満月の夜は、不可思議な事件が多い。
ネットのどこかでそんな記事を見掛けたことがある。月の満ち欠けが人体のバイオリズムに影響を及ぼすため、男は興奮状態に陥りやすく、女は不安な気持ちになりやすい、とかなんとか。
ネットで読んだ話だから、どこまで信じていいのかわからない話だが、妙に気になったことを覚えている。
なぜそんな話を急に思い出したかというと。このところ、満月の夜は妙に体が熱いのだ。
学校の友達に話したら、「お年頃だからだろ? 黒田隼人君は誰のこと思って体を熱くさせてるのぉ?」って笑われたけど。
お年頃というのは否定しないが(実はちょっと気になる子がいるし)そういう熱さではない気がする。もっと、身体の内部からマグマみたいな熱がやってきて、体の細胞という細胞を塗り替えていくような、不思議な感覚。これもお年頃だからだろうか?
そんな満月のある夜、俺は体の熱さに耐えられなくなり、窓を空けて夜風にあたることにした。冷たい風が熱くなった体を冷やしてくれる。なんとも心地良い。ふと、空の満月を見上げた。満月の射し込むような明るさが、目に飛び込んできた、その瞬間。俺の体は満月の黄金色の輝きに包まれた。幻覚かと一瞬思ったが、手を見ると黄金色に輝いてる。
これってまさか──。オオカミ男に変身とか? 満月の夜に男が変身するものといえば、やっぱりオオカミだ。脳裏にアニメで見た、勇ましいオオカミが浮かぶ。オオカミならば、一度ぐらいは変身してみたい。
俺の思いに応えるように、身体はますます熱くなり、黄金色の光が俺の身体を少しずつ造り変えていく。
「うぉぉぉ〜!!!」
俺は月夜に吠えた。オオカミ男らしい猛々しい声で、男らしく。俺はオオカミになるんだ!黄金色の光は俺の体を、黒く小さな体へと変えていった。
「カァァァ〜!!!」
……ん???
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