プロローグ

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プロローグ

 この娘、少々抜けているのである。 「私、猫カフェを始めることにしました!」  魔法学校の進路相談室――。シルヴェスが大真面目な顔でそう言うと、担任の魔女ルベルは心底呆れた表情を浮かべた。 「はあ……。あんたみたいに出来の悪い生徒もはじめてだけれど、あんたみたいに変わった進路を希望した生徒にも、これまで会ったことがないわ」  ルベルは羊皮紙に羽ペンでメモを取る手を止めると、お手上げとでも言うように、両手を上げて力なくうなだれる。 「すみません。十年もいて猫に変身する魔法しか身に着けられなくて……」 「それはもういいわ。それより、『猫カフェ』? 一体どういうことなの?」 「それはですね」  シルヴェスは手を口に近づけると、小さく咳払いをして続けた。
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