終幕

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「はい。『誰もが分け隔てなく交流できる隠れ家』――それがこの店のコンセプトですから」  シルヴェスは微笑んで答えた。それからサイベルの腕をとんとんと叩いて彼を振り向かせると、店内のテーブルを端から順番に指さして紹介する。 「ほら、見てください。あの奥のおばあさんと、その手前の三人は魔法使いじゃありません。ハーブティーを飲んでいるカップルは、魔法使いと一般の人のペア。この店で出会った二人です。それに……」 「サイベル君!」  ――と、シルヴェスが言い終わる前に、また誰かが鋭い声を上げた。 「ダ、ダグラスさん!?」  しまった! この人がいることを忘れていた!  不機嫌な顔のジャックを抱きかかえたまま、こちらに駆け寄ってくる紳士の姿を見て、シルヴェスは臍を噛んだ。 「しゅ、首領! どうしてこんなところに!?」  サイベルは思わずたじろいで後ずさる。 「それは私のセリフですよ! 全く。君という人は……。魔法使い解放軍の方針に反して勝手なことばかり。流石にこれ以上は、私も見過ごすわけにはいきませんよ」 「ちょ、ちょっと待ってください。今は……」  シルヴェスは慌てふためいて二人の間に割り込もうとする。 「どうした? ダグラス。そいつは知り合いなのか?」
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