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「うん……」
シルヴェスはうつむくように頷いた。
理由はどうあれ、サイベルは大罪を犯した。捕まってしまうのは仕方のないことだろう。でも、その先に彼がどうなるかは考えたくなかった。
「応援してるよ。頑張ってね」
サイベルはシルヴェスに声を掛けてから、ラークの方に両手を合わせて突き出す。
「ほら、ラーク君。僕は覚悟を決めた。早くしょっぴいてくれ」
しかし、次の瞬間、ラークはサイベルの手を勢いよく平手でひっぱたいた。
「おい。あんた、何勝手に死のうとしてやがんだ。これであんたが火あぶりになったら、俺の方が後味悪いだろうが」
「え? でも……」
「いいからさっさとキャリアーの隠し場所を教えろ。そしたら、俺はあんたの護送中に『うっかり』あんたを国境の外まで逃がしてしまうつもりだからな」
「ネズミたちはサイベル・ベーカリーの地下室だよ。――でも君、僕を逃がすって本気なのかい?」
「ああ……。だが、これは別にあんたのためなんかじゃない。罪滅ぼしのために宮廷魔導士になった俺個人のけじめだ。だからあんたは大人しく逃がされろ」
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