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新生活!
魔法使いという職業は気味悪がられやすい。
ここ、シャランド王国でも、魔法使いは疎まれ、公的に認められている宮廷魔導師を除くほとんどの魔法使いは、正体を隠し、別の仕事で収入を得て生活していた。
そのため、魔法学校という組織も、一種の秘密結社のように、一般市民の目からは隠され続けていたのだ。
すなわち魔法学校は、未熟な魔法使いが自分の身を守れるようになるまでのシェルターの機能を果たしていたのである。
魔法使いにとって、魔法学校の卒業は独り立ちを意味していた。
そして、この年もまた、五百人もの新たな魔法学校卒業生が王国中に解き放たれていたのであった――。
「レピーネ通りの三番地……。えーっと、私の新しい下宿はどこ?」
耳が隠れるくらいの長さの黒い髪。暗闇で大きくなった猫の瞳のような黒い目。黒いブラウスと、これまた黒いスカートに身を包んだ娘──シルヴェスは、さっそく石畳の街角で迷子になっていた。
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